記憶に残る美しき日本#2

故郷にある佛通寺にはじめて来たのはいつ頃だっただろうか。小さな頃に両親に連れられてだったか、学校の遠足だったか忘れてしまったけど、おぼろげにこの景色を覚えている。

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Photo by instagram kaorin0308

ここは紅葉のもみじが世界遺産の厳島神社に勝るとも劣らない名所と言われているが、実は「禅道場」でも知られる寺。子どもの修業体験や企業研修などにも利用される。

 

昔から少し変わり者の兄などは、大人になってから自ら修業のため僧侶体験をしたことがある。毎日座禅を組み煩悩を払い、僧侶と同じく暗い早朝から掃除に取り組む。それは辛かったが終わる頃には意外にも心が清められた気がして気持ちがよかったのだと言う。

 

IMG_2055_Fotor庭の枯山水も美しく手入れされており、派手さはないが慎ましく清らかな印象を受ける。心根の美しい人に出会ったときのように、傍にいるだけでこちらの心も洗われたような気持ちになり、心地良く見つめていると離れ難くなる。

 

この禅寺にじつは一番感動していたのは夫だ。今まで数々の有名な寺社仏閣へも訪れたが、立派な文化遺産には多くの観光客が押し寄せていて、とにかく見ることだけで精一杯。そこにある空気感や趣までしみじみと肌で感じられる場所は最近では難しいと彼は言う。そんな彼も「ここは素晴らしい場所だね。」とあちこちに目を凝らしシャッターを切っていた。

IMG_2050_Fotor悪霊や厄払いをするという鬼瓦の装飾。子どもの頃は怖かった鬼の顔も外国人の夫から見れば日本ならではの美しいアートだ。

 

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Photo by hiroshi_ka

子どもたちも誰にぶつかることもなく、鮮やかな背びれをヒラヒラさせながら優雅に泳ぐ鯉を眺めたり、天然記念物の大きなイヌマキの木で一休みする螳螂を恐る恐る捕まえたりと、ゆるやかに流れる時間を過ごした。

私はここで境内をゆっくり歩きながら、私の渡英後、病に倒れ言葉をうまく操ることができなくなった兄と少しずつ色々な話をした。小さな頃の話や日常のささいなこと。

こんな場所でなら、彼の日頃思うこと、静かに訴えたいことがよくわかる気がした。

ここで過ごした時間は、目を閉じればいつでも取り出せる私だけのアルバム写真だ。私はどこに住んでいようともそれを時々取り出しては、懐かしく鮮明に思い出せる。あのときのかけがえのない時間と愛おしい日本の風景を。

佛通寺のHPはこちら

 

【今日のひとコマ】
日本のおやつが恋しくなったら餡子を作る。スーパーで売ってるAzuki Beansをお鍋でコトコト炊いてあんパンに。日本が大好きでチョコレートよりも和菓子が好きな長男の好物。

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