2666 チキンレース ~ Coward Reading Race for “2666”

“2 Luv U” by Avani

 

 

今、私の目の前には宿敵とも言うべき小説がこちらを睨みつけて横たわっている。厚さ6.3センチ、893ページに渡る長編ミステリーの超大作である。

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3日前、NYの友人とチャットしている最中にこの小説の話になったのだ。仲間うちで2年に1度くらい、この本の「読み終わった?どのくらいかかった?」が話題になる。

ロベルト・ボラーニョ著 “2666”

ミステリー小説を、実は好んで読む方ではないのであるが「生きているうちに一度は読むべき名著」として世界中に認知されているこの小説は読み切ろうと心に決めている。

心に決めているものの、進まない、進めない。もともと長編小説は大好きなのに、だ。

“2666” を一気に読み切ったという人を仲間うちでは誰ひとりとして知る者はいない。重苦しい内容で疲労やストレスを伴う為中休みや気分転換が必要になるのであろうが、それにしても、意味もないチキンレースが世界中のほんの小さなコミュニティ(私の周り)で繰り広げられているわけである。

ある友人は2カ月で読み、ある友人は3年かかったと言い、平均するとだいたい1年半くらいかけてゆっくり読み進める人が多い。ちなみにメンバーは小説家、詩人、大学教授や外交官など文章を読むのも書くのもお手のものな人たちばかりだ。「忙し過ぎて」も私を除き理由になるだろう、けれど一気に読破するには勇気が要るようだ。

今のところ、トップ走者はぶっちぎりで私である。8年が過ぎてもまだ終わらない。5部構成の4部途中で、どうしても読み進めることができないでいる。

このチキンレース、独走中の私を含め時間が掛かるのには共通の理由がある。長編小説中毒症。つまり、終わってしまうのがもったいなくて読みたいくせに読まないでいるというもの。「実はおもしろくないんじゃないの?」と仰る方もおいででしょうし、「分かるなあ」と言ってくださる方もおいででしょう。

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私の場合は “2666” の他に日本ではあまり人気の出なかった “Twilight Saga” もそれである。これは、表現こそ「ん?単純?」と思ってしまうこと多かれどストーリーは娯楽性たっぷりの良作。ファンタジーもそう好きではなかったし、ましてや吸血鬼など興味もなかったのになぜだか夢中になった。

1作目の “Twilight” から “New Moon”, “Eclipse” と3冊はそれぞれひと晩で読み終えたものの、最後の “Breaking Dawn” だけは、これでお別れかと思うとついちょびちょび文字を追い、結局ロードショーを先に観てしまって、それで気が済んだわけでもなく、じっくり原作と付き合うつもりで時々書棚から引っ張り出してきてはまたちょびちょび読む。

ちなみに映画は原作を超えないもの、私は原作と映画は別ものと考えている。

仕事絡みということもあるが私の読書にはクセがあって、数冊の本を同時に読み、これが完走を遅らせる原因になっているとも思われる。

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さて。ここまでお話しすると “2666 チキンレース” はケイティの圧勝に終わりそうだと思っていただけるはずであるが、先日の友人が水を差した。2004年の出版時に買って以来、まだ最後まで読んでいないという上手がいるらしい。13年である。

ああ、女王返上。どうしてこんなことで少々悔しいのか理由がまったく分からないが、火に油を注ぐように友人が続ける。

「でね、彼女にあなたの話をしたのよ、もう8年読んでる友達がいるよって。そうしたらクスッと笑って『どうぞお先にって言っといて』だって。どうする?読んじゃう?」

余裕で8年女王を挑発する13年選手。「ではお言葉に甘えて」って言うわけがなかろう。答えは自信を持ってNOである。読みたくてたまらないけど、このレースを降りるわけにはいかぬ。しかたない、今日は2ページでガマンだ。

どこの誰だか知らないが、彼女と私の世にもくだらない「2666 エア・チキンレース」はまだまだ続く。

 

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